第10回「音響」
オペラならオーケストラ、歌舞伎なら義太夫節、ミュージカルなら歌…と、昔から舞台芸術と音楽は切っても切れない関係にあります。音響は、そんな舞台に欠かせない音楽を流す仕事です。
…いや、欠かせないのは重々承知なのですが、音響って何のためにあるのでしょう。
演劇での音は、大まかに2つの種類があります。
ひとつは、実際にその場で流れる音。例を挙げれば、シーン中で鳴る電話の着信音や、舞台外で物が落ちるドサッという音。これはもちろん鳴るべき音です。
難しいのが、BGMなどの実際にその場に流れていないはずの音です。これ、無くても物語は成立するのに、なぜ曲を流すのでしょうか。
例えば、場の雰囲気を作るため。例えば、場面転換中も作品の世界観に浸れるようにするため。例えば、主人公の心情の変化を表すため。
実はBGMの効果って場面と曲によって様々なのです。その中でも僕の一番好きな効果は、「シーンの感動を、より増幅させる」というものです。
お客様の感動に寄り添える音楽を流せているでしょうか。そんな点にも耳を澄ませていただけると幸いです。